
工場や倉庫の屋根材として、長年、多くの現場に採用されてきた「大波スレート」。
意匠やコスト提案、近年では施工できる職人の減少などの原因により、新築物件は減少傾向にあります。
が、スレート屋根は依然として現役で使われ続け、「大波スレート」でないと対応できない案件もあります。
今回は、大波スレートが今もなお使用される理由と、現在の施工現場の課題についてまとめました。
大波スレートの特徴とメリット
大波スレートは、セメントと繊維(現在は無石綿)を主成分とする屋根材で、腐食に強く、雨水を効率よく排水するための波型形状が特徴です。
紫外線や風雨に対する耐性に優れるだけでなく、特にアンモニア・酸・アルカリなどに強い性質を持つため、化学工場や畜産施設などでは今も使用されています。
金属屋根に比べて錆びる心配が少なく、過酷な環境下でも安定した耐久性を発揮します。
・耐火性に優れている
・耐久性があり、築年数50年をこえる建物もある
・遮音性が優れている
・部分交換が可能のため経年劣化や補修の際、修繕コストが抑えることが可能な場合も。
大波スレートの耐用年数とデメリット
一般的な耐用年数はおおよそ30年程度とされ、適切なメンテナンスを行うことでさらに延命が可能です。
ただし、劣化が進むとひび割れや欠損による雨漏れ、留めつけているフックボルト・ビスなどの経年劣化による強風時のスレート材の飛散などが生じやすいため、定期的なメンテナンスが推奨されます。
大波スレートには優れた点が多い一方で、いくつか注意すべき弱点もあります。
古いスレートのアスベスト問題
2004年ごろまでに施工されたスレート屋根の中には、アスベスト(石綿)を含んだ製品が施工されている可能性があります。
改修や撤去の際には専門業者による安全な処理、施工前の事前報告義務が必要となります。
*2006年にはアスベスト0.1重量%以上のアスベスト含有製品の製造・輸入・譲渡・提供・使用が全面的に使用禁止とされました。
割れやすさ
セメント系の素材のため、強い衝撃が加わると割れやすい性質があります。台風や地震後には、割れやヒビが発生していないか点検が必要です。
断熱性能の限界
素材自体にはある程度の断熱性があるものの、真夏の直射日光下では屋内温度が非常に高くなります。遮熱材や断熱工事を併用することで、快適性を向上させることができます。
現在の課題:施工できる職人の高齢化と減少
大波スレートの施工には専門技術が必要ですが、近年は施工できる職人の高齢化が進み、引退する方も増えています。
若手職人の育成も進みにくく、新築工事では金属屋根への切り替えが進んでいるのが現状です。
このため、古いスレート屋根の改修やメンテナンスでは、工期削減・含有アスベストによる処分費削減を目的とした、既存スレートの上から板金材をかぶせる「カバー工法」がよく採用されています。

まとめ
大波スレートは、過酷な環境に強い屋根材として、今も必要とされ続けています。
しかし、施工できる職人の減少という課題も抱えており、今後は「既存スレートを活かすメンテナンス」や「板金材によるカバー工法」など、時代に合わせた対応が求められています。
スレート屋根の劣化やリフォームを検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
コメントを残す